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【ガライヤ・レストアPJT #05】ガライヤはどのように生まれたか? ガライヤの生みの親、住野公一氏への特別インタビュー

2000年代初頭にオートバックスが開発したスポーツカー「ガライヤ」のレストアプロジェクト。最終回を迎える今回は、ガライヤの生みの親である住野公一氏への特別インタビューをお届けします。

1994年にオートバックスセブンの代表取締役CEOに就任し、2008年の退任以降は同社の相談役を務める住野公一氏。オートバックス初のオリジナルカー「ガライヤ」は、住野氏の号令によりスタートしました。

ガライヤの企画は、どういった経緯で始まったのか。また、開発にはどのような苦労や困難があったのか。

連載の最終回となる今回は、住野公一氏に特別インタビューを行い、当時のお話をうかがいました。

ガライヤ誕生の背景にあった、スタッフへの想いと挑戦心

▲オートバックスセブンの元CEOで現在は同社の相談役を務める住野公一氏

▲オートバックスセブンの元CEOで現在は同社の相談役を務める住野公一氏


――「ガライヤ」という名前は、住野さんが命名されたとうかがっています。

その通りです。中国の説話に登場する盗賊「我来也(ガライヤ)」に由来しています。日本でいう、ネズミ小僧のような人物です。

「自来也(ジライヤ)」という舞台劇のモデルになっているとする説もあります。すばしっこいキャラクターで、ヒラリヒラリと蝶のように舞って活躍する。その軽快なイメージは、まさにガライヤにピッタリでした。

また、我来也の名前には「我(われ)来(きたれる)也(なり)」との意味合いがあります。ガライヤという名前には、日本の自動車業界に打って出るという意気込みも込めていました。

――ガライヤのエンブレムはハチドリですが、この由来は?

ハチドリは個性豊かで、前にも後ろにも縦横無尽に動きます。ガライヤも、そういう車であることを表しています。

▲ガライヤの特別感を演出する特徴的なエンブレム

▲ガライヤの特別感を演出する特徴的なエンブレム


――ガライヤを企画した経緯を教えてください。

オートバックスに関わるすべてのスタッフに、自信を持ってもらいたかったんです。当時のオートバックスは、カー用品の販売が主な業務で、スタッフはどこか「自分たちの立場は自動車メーカーの下だ」と、思い込んでいました。

だから、オートバックスもメーカーと同じようにオリジナルの車を作ることができると証明し、スタッフに「自分たちとメーカーは対等の立場なんだ」と、自信を持ってもらいたかった。

また、当時はメーカー以外が自動車を作って売るのは、とても困難なことでした。そこに挑戦したかったというのもあります。

▲ガライヤの企画時を振り返り、熱い思いを語る住野氏

▲ガライヤの企画時を振り返り、熱い思いを語る住野氏


そんな折、トミーカイラの富田さんとレーシングドライバーの松本さんから「スポーツカー開発研究部門」当社グループへの参画についてご相談をいただきました。詳細を詰める前に、まずはトミーカイラZZに乗せてもらったところ、とても軽やかに走る楽しい車でした。こんな車をオートバックスでも作りたいと思ったんです。

――トミーカイラZZは、ガライヤの原型だとうかがっています。

そうです。けれど、トミーカイラZZは普段使いには少し厳しいでしょう。そこで、ガライヤはオープンカーではなくクーペにして、エアコンやオーディオといった快適装備をつけたんです。また、スポーツカーらしい格好良さを演出するため、シザーズドアを採用しました。結果的にトミーカイラZZより大きくなりましたが、直進安定性と乗りやすさが増しました。

言語の壁を乗り越えて完成した、車が好きで、乗るのが上手な人向けの車

――ガライヤの開発にあたり、困難だったことはありましたか?

なにもかもが初めてのことですからね、困難の連続でしたよ。特に問題だったのは、コミュニケーションの難しさです。ガライヤはイギリスの工場で開発していたこともあり、現地のスタッフとのやり取りにはすれ違いや齟齬が多く、苦労しました。

――具体的には、どのようなすれ違いや齟齬があったのでしょう。

例えば、ボディカラーの調合の指定ですね。こちらの求めるカラーを伝えるのが、とにかく難しい。仕上がった車両を見たら予定していた色合いとまったく違う、なんてこともありました。言葉が違うことによるコミュニケーションの難しさを、あらためて思い知らされましたね。

▲苦労があったものの、製作を通して学びが得られたと語る住野氏

▲苦労があったものの、開発を通して学びが得られたと語る住野氏


また、開発中にどんどん物価が上昇し、当初予定していた価格では販売できなくなってしまったんです。フェラーリやランボルギーニといったスーパーカーが何千万円もするのは、理由があってのことなんだと学びました。

――完成したガライヤを見て、実際に乗られた時の感想を教えてください。

ガライヤの1号車は僕がオーナーで、今でもガレージに保管してあります。納車されたガライヤはやはり格好よく、シザーズドアにこだわったのは正解だと思いました。

ガライヤは軽く、ミッドシップなレイアウトです。とはいえ、雨の日でも真っ直ぐ走って、車体はブレません。本来なら、軽い車は横風なんかに弱いですが、背が低いからかあまり影響を受けませんでした。ガライヤは良い車でしたよ。

▲ガライヤの魅力について、身振り手振りを交えて熱弁する住野氏

▲ガライヤの魅力について、身振り手振りを交えて熱弁する住野氏


ただ、エンジンが真後ろにあり、暑いし、エンジンサウンドも大きい。助手席に座る人とまともに話そうと思ったら、インカムが必要なくらいです(笑)。乗りやすいとはいえ、やっぱりガライヤはハードな車。車が好きで、乗るのが上手で、そういう人のための車です。

――万人受けする車ではなく、玄人向けの車なんですね。

そうです。だからこそ、ガライヤはすべての人が購入できるわけではなく、お客様には運転試験を受けていただき、受かった人だけが購入できるようにしたかった。納車もオートバックスの店舗で行うのではなく、新しいオーナー様を本社に招き、特別な納車式を行う予定でした。そういった理想図を描いていた頃が、一番ワクワクしていましたね。

▲内装の細部に至るまでこだわりが詰まっているガライヤ

▲内装の細部に至るまでこだわりが詰まっているガライヤ

ガライヤ=オートバックスにとって挑戦の証。

トミーカイラZZ譲りの軽快さを持ち、高い直進安定性を誇るガライヤ。基本性能の高さが生み出す楽しい走り、そして格好良さは、登場から20年以上を経て、なお唯一無二の存在です。

そんなガライヤは、レストアされ、見事に復活を遂げました。レストアプロジェクトの様子は#01~#04にてお届けしていますので生まれ変わった姿をご覧ください。

取材・文:糸井賢一
写真:飯島隆
編集:西村友香理、木谷宗義/type-e+ヒャクマンボルト

<連載:ガライヤ・レストアプロジェクト>
#01:伝説のスポーツカー復活プロジェクトが始動!ベース車両に隠れていた課題、そして「レース屋」が仕切り直しを決断した理由

https://www.autobacs.live/magazine/article/1002/

#02:2台目のベースはコンディション良好のはずが…「新たな壁」を乗り越えたエンジニアの策とは?

https://www.autobacs.live/magazine/article/1003/

#03:「走った!」で終わらない。メンテナンスまで考慮したレストアで「ガライヤ」を本来の姿に戻す

https://www.autobacs.live/magazine/article/1004/

#04:サーキットコースでの試運転もクリア!完璧な仕上がりでのガライヤは『東京オートサロン2026』でお披露目へ

https://www.autobacs.live/magazine/article/1005/

#05:ガライヤはどのように生まれたか? ガライヤの生みの親、住野公一氏への特別インタビュー

https://www.autobacs.live/magazine/article/1006/

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