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自然災害時のクルマの使用に関しては、不十分な知識や対策、間違ったクルマの運用によって乗員に危険が及ぶこともあります。そこで今回は、地震に見舞われた際にクルマをどう扱うべきか、また少しでもリスクを避けるために事前に対策できること、地震の際にクルマを避難所として使用するための注意点などを紹介します。
クルマを運転中に地震に遭遇したときは、ハザードランプを点灯させ、周囲の交通状況を確認のうえ、安全かつ緊急自動車の通行の妨げにならない場所にクルマを停めましょう。続いてスマートフォンの地震速報、ラジオのニュースなどで情報を入手。その後の行動を検討しましょう。
クルマから離れる必要があれば、ドアをロックせず、キーを車内のわかりやすい場所に置き、身のまわり品、車検証などの貴重品を携えてクルマから避難。あらかじめ貴重品をまとめてもって出られるコンパクトなリュック(最小限の避難用品に入れておく)を用意しておくとイザというときに役立ちます。
▲クルマを離れる際は、第三者が救急活動のために移動させなければならない場合もあるため、キーを車内に残しておくのが原則。
では、自宅にいるときに大地震が発生し、避難する必要があると判断した場合はどうすればよいでしょうか。避難所に避難、被害のない親戚、知人宅に身を寄せることなどが考えられますが、過去に大きな地震があった際には、車内に避難していたケースもありました。その理由として避難所ではプライバシーが守られない、ペットと避難できない……ということが挙げられたそうです。
そこで在宅避難の延長にある第二の在宅避難になりえるのが、前提として愛車が無事で安全な場所に停められる場合の車内避難。車内はプライバシーがある程度守られ、燃料と電源さえあれば、たとえ地震で避難エリアが停電していたとしても、エアコンを使うことができ、USBポート、アクセサリーコンセント(別途、アクセサリーコンセントに刺すUSBソケットが必要)から災害時の命綱ともなるスマホの充電をすることができます。ラジオからの情報収集も可能となり、TV機能があれば映像とともに最新情報を入手でき、家族の緊急避難場所=シェルターになりえるのです。
▲災害時、車は重要な電力源となり、連絡手段として欠かせないスマートフォンの充電も可能です。
とくにペットとの避難を考えている家族にとっては、避難所にはペットが入れないケースがほとんどのため、ペットと一緒でも誰にも迷惑がかからない車内避難は、緊急一時避難のひとつの方法となるのです。
▲十分な備えがあれば、ペットとの一時避難はクルマのほうがむしろベターかもしれない。
しかし、車内避難には上記のメリットがある一方、注意点も多くあります。それが過去の地震でも報道されたエコノミークラス症候群(血栓症)の発症です。車内の座席に長時間座り続けることで足や下半身に血液のかたまり(血栓)ができ、それが血流に乗って肺の血管(肺動脈)につまり、胸の痛み・呼吸困難・循環不全などをきたす可能性があります。発症すると命にかかわることもあるため注意が必要です。その対応策として、水分を十分にとり、マメに車外に出て軽い運動をすることが推奨されていますが、可能であればフラットシートアレンジで車内を車中泊が行えるベッド化、お座敷化することが有効です。
また、冬の降雪時の車内避難では、一酸化炭素中毒にも気をつけましょう。マフラー出口付近が雪でふさがれたままエンジンをかけっぱなしにすると、排気ガスが車内に入り込み、気づかないうちに一酸化炭素中毒になってしまうこともあります。対策としては、マフラー周辺をスコップなどでこまめに除雪する、頻繁に換気を行う、就寝時は必ずクルマのエンジンを切るなどが挙げられます。
▲降雪時の車内避難で気をつけたい一酸化炭素中毒。そのためにもこまめにマフラー付近に積もった雪は除雪しよう。
では、車内をプライバシーがある程度守られる緊急避難場所として利用するとき、どんなアイテムがあるとより便利で快適でしょうか。すでにエアコン、ラジオ、スマートフォンの充電ができるUSBソケット、充電用USBケーブルなどがあることを前提にすれば、家庭内の基本的な備蓄のほかに以下のアイテムを車載、または準備しておくといいでしょう。
●飲料水
コップがなくても飲める500mlのペットボトルの水を推奨。車内には普段から500mlのペットボトルの水を最低家族分×2本を分散して積んでおくといいでしょう(ローリングストック)。なお、通常はひとり1日3リットルの水が必要とされていますから、自宅に人数分×1週間分備蓄しておくと安心です。
▲トラックやドアポケットなどに非常用としてペットボトルの飲料水を用意しておくと安心だ。
●折り畳み式または巻取り式マット&タオルなど
シートのフラットアレンジができるクルマでも凸凹があることがほとんど。快適に横になるためには凸凹を埋めるタオルや、その上に敷くマットがあると、より快適に横になれます。2列シートのSUV、ステーションワゴンでベッド長が身長に対して足りない場合でも、前倒しした後席のヘッドレストを逆付けにすることで、その部分が枕がわりになり、ヘッドレストの長さ分、ベッド長を伸ばすことができます(車種、ヘッドレストによる)。自宅の駐車スペースでの車内避難に限定すれば、かさばるマット類は自宅に保管していてもOKです。
▲マットを敷くことで横になったときの身体の痛みが抑えられ、車中泊の快適性は飛躍的に向上する。
●シェード/カーテン
車内で避難、車中泊するにしてもウインドウから車内は丸見えで、プライバシーが完全に守られるわけではありません。そこで用意しておきたいのがウインドウ全周を覆うプライバシーシェード、またはカーテン。フロントウインドウ、サイドウインドウ、リヤウインドウまでカバーできれば車内のプライバシーが守られます。
また、車体外側のウインドウまわりにマグネットで貼りつける防虫カーテンは、暑い時期にウインドウを開けて風通ししつつ、害虫の車内侵入を防いでくれる効果もあります(いずれもアウトドアでも役立ちます)。
▲車外に装着するタイプの防虫カーテン。クルマに装着するタイプのアイテムを購入する際には、愛車に装着できるかを事前に確認したい。
●LEDランタン
車内避難時の夜、車内の灯りは不可欠。しかしルームランプの灯りを頼りにするのはバッテリー上がりの原因となります。普段の夜のトラブル、アウトドアでも役立つLEDランタンがあれば、車内の暗さを解消できます。
▲LEDランタンはほとんどが充電式。長時間車載したままにしていると放電されていることもあるので、定期的に充電しておきたい。
●ポータブル電源
車内でのスマートフォンの充電はUSBポートからも可能ですが、車載バッテリーに負担がかかります。ポータブル電源であれば車載バッテリーに負担をかけずにスマートフォンの充電、電化製品の使用などが可能となります。もちろん、アウトドアでも大活躍してくれる予備電源です。
▲ポータブル電源にはコンセントが備わっていることがほとんど。家庭用の電化製品が使えるのもうれしい。
●非常用トイレ
断水などで普段のトイレが使えないときに役立つのが非常用トイレ。芯を抜いてつぶしたトイレットペーパー、使用時の恥ずかしさを回避できる簡易ポンチョも用意しておくといいでしょう。非常用トイレは車内の手の届く場所にひとりにつきふたつ用意しておくと安心です。トイレットペーパーは芯を抜いてつぶしておくと場所をとりません。もちろん、非常用トイレは家庭内にも備蓄しておきましょう。1日5回の使用として家族の人数分を最低でも3日分は常備しておきましょう。凝固剤、汚物袋、防臭袋のセットだけでなく、家庭のトイレが壊れたことを想定した組み立て式簡易トイレもあると安心です。
▲非常用トイレにもさまざまな種類がある。収納場所や使い方などを吟味して購入しよう。
●ペット用品
ペットとの車内避難を想定するのであれば、ペットシーツ、エチケット袋(うんち袋)、臭わない袋、水飲み皿、スペアのハーネス&リードなどをお散歩バッグにまとめて積んでおきましょう(ワクチン、狂犬病の証明書はスマホのなかにデータ保存しておくことを推奨)。
▲災害時に必要なアイテムを揃えたペット用の防災バッグも販売されている。
そのほか、肌掛け、寒い時期にはカイロなどもあると助かります。そして重要なのが、普段からできる限り満タン、満充電を心掛けること。大災害時、しばらくの間はガソリンスタンドが休業となり給油できず、停電で電気自動車の充電が行えないことも想定されるからです。
▲普段からこまめにガソリンを満タンにしておくことが、万が一の際の安全につながる。
日本は世界有数の地震大国であり、いつどこで巨大地震に遭遇してもおかしくありません。いざというとき、クルマは移動手段としてだけでなく、プライバシーを確保できる臨時の「避難所」としても大いに役立ちます。しかし、間違った知識や準備不足のまま車内避難をすると、エコノミークラス症候群などの二次災害を招く危険性も孕んでいます。日頃から車載用の防災グッズを備え、シートアレンジを試しておくなど、愛車を「命を守るツール」として最大限に活用できるよう、平時からの正しい備えとシミュレーションを徹底しておきましょう。