とことん極める
単なる工具売り場じゃない、DIYerのためのセレクトショップ「クラフトメイク湘南平塚店」。自らも愛車を一から作り込む“DIY沼の住人”であるタスクリーダー臼井さんに、マニアックな道具選びの哲学とDIYの魅力を聞きました。大人の秘密基地の全貌に迫ります。
湘南平塚のロードサイドに現れる、黒地に「クラフトメイク」の文字が大きく掲げられた建物。一見すると海外のガレージのような佇まいを持つ、「クラフトメイク湘南平塚店」です。
店内に足を踏み入れると、そこはまるで大人の秘密基地。壁にはラチェットハンドルやソケットが整然と並び、棚にはプロ仕様の工具やマニアックな部材がずらり。量販店ではなかなか見かけないアイテムが勢揃いしています。
「どうしてここまで揃っているんだろう?」
その答えを教えてくれるのが、この事業のタスクリーダー臼井さん。社内公募に手を挙げ、新規事業としてこのクラフトメイクをゼロから形にしてきた張本人です。今回は臼井さんに、クラフトメイクに込めた道具選びの哲学や、DIYの魅力について語っていただきました。
臼井さんプロフィール>
DIY歴30年以上。店舗勤務を3年半、商品部を10年間、営業を4年間、中古車の買取販売本部を11年間経験。2025年より商品企画部経験した後、自身が主導し、クラフトメイク立ち上げに至る。2025年10月に「クラフトメイクSA43道意店」を、2025年11月に2店舗目となる「クラフトメイク湘南平塚店」をオープン。
CRAFT MAKE 公式サイト-DIYer必見-工具・DIY・楽しいガレージライフをテーマとしたセレクトショップ
──専門的な工具が揃う「クラフトメイク」ですが、そもそもどんな経緯で立ち上がったお店なんですか?
臼井さん:ざっくり言うと、「工具を使った新たな需要の創造」というテーマの社内公募が出たので手を挙げました。小学生の頃から工作が好きで、大人になってからもずっとクルマのDIYをし続けてきた自分にはもってこいだと思い、「やるしかない!」と手を挙げました。
──ゼロからのスタートだったと思いますが、お店の中身もすべて臼井さんが考えたんですか?
臼井さん:そうですね。どういうお店にするか、どんな商品を置くか。DIYer目線を大切にして、自ら主導でゼロからコンセプトを考え、形にしていきました。とは言うものの、結局は車とDIYが大好きな私(みたいな人)が行きたいと思う店を作ったという感じですかね。まだまだ未完成ですが。
──コンセプトから作られたんですね。具体的にはどんな想いを込めたお店なのでしょうか?
臼井さん:工具と部材って有ると作業の幅がどんどん広がって行くんですよね。こんな工具有ったんだ、こんなメーカー有ったんだ、こんな部材有ったんだ、こんな作業ができるんだ と、新たな発見が楽しめる場所にしたいという想いがありました。
工具って、ブランドバッグに近いと思っていて、だんだんいい工具が欲しくなって来るんですよね。でもいい工具ってなんだろうとも思うんですよ。工具って100円ショップで売っているものからスナップオンなどの超高級品まで幅がメチャメチャ広いんですよ。その中でも、ブランドで選ぶのではなく、安くてもメーカーの歴史や開発コンセプトなど、見た目ではわからないその工具に秘めた背景と一緒に作業を楽しんでいただきたいと思っています。
なんでも高級品をおススメするのではなく、車やバイクのDIY好きにちょうどいい工具をセレクトしています。
──「DIY好きにちょうどいい」ってどういうことですか?
臼井さん:車やバイクって熱や雨風にさらされて、固くて回らないネジやボルト・ナットが有るんですよ。これらを外すときはプロ仕様の丈夫で精度の高い工具を使った方がネジやボルト・ナットを壊さずに済むとか、職人さんの様に毎日長時間使うわけでは無い電動工具の場合は、バッテリーの発火問題も有るので、安心して使える日本メーカーの物であれば安くても大丈夫とか、こんな視点を「DIY好きにちょうどいい」と表現しました。
──ただモノを売るだけじゃなく、作業の「質」や「楽しさ」を提案する場所なんですね。臼井さんご自身も、相当なDIY沼の住人だと伺いました。
臼井さん:はい、もうどっぷりです(笑)。クルマをいじっては「みんカラ」というDIY投稿サイトにアップしていますね。
──そもそも、クルマを自分でいじり始めたきっかけは何だったんですか?
臼井さん:小学生の頃に父が連れていってくれた東京モーターショーで、ランボルギーニ・カウンタックを見たんです。ドアが上に開いて、横幅が広く、車体がぺたんと低い。カッコいいな~と衝撃を受けました。でも、ああいうクルマって簡単には手に入らないじゃないですか。だったら、「自分で作っちまえ」と。それで、やりたい作業に合わせてちょっとずつ工具を買い揃えていったんですよね。
「口で説明するより、僕のクルマを見てもらったほうが早いですね」。
そう言って案内された駐車場に停まっていたのは、真っ赤な三菱・エクリプス。はじめてみるデザインのエクリプスに驚きが隠せません。
▲ワイドなオーバーフェンダー、そして独特の質感を放つボディ塗装のエクリプス
──え、これ全部ご自身でやったんですか!?
臼井さん: はい!このエクリプスの塗装から内装までDIYしています。エクリプスってマイナーな車種なので、パーツが全然ないんですよ。 このオーバーフェンダーも、市販品がないから発泡ウレタンを削って、型を作って、FRPで作りました。車幅が変わるので自分で陸運支局に行って、構造変更の手続きまでやりましたからね(笑)。もともと黒だったボディも、レンタル塗装ブースを借りて自分でキャンディーレッドに塗りました。ホロもボロボロになってしまったので粘着剤付きのフェイクレザーシートを上から貼っています。ちなみにマフラーも溶接機を使って加工しています。全部車検に通りますのでご安心ください。
──マイナー車だからこそ「ないなら作る」の精神なんですね。
臼井さん:そうですね。あとは自分でやることで金額も抑えられるんですよね。業者に出せば何十万もかかりますけど、自分でやれば材料代だけで済みますから。その分、他のパーツに予算を回せる。このテールランプも作りました。最初は社外品をつけていましたが、デザインに飽きてしまったので中身をごっそりいじりました。ファイバー風にするため乳白色のアクリル板を切って、ヒートガンで温めながら曲面に合わせて曲げたり。裏からLEDテープを仕込んだりしています。今ハヤリの一文字風です。(笑)
──エクリプスだけでなく、アルファードもDIYされていると聞きました。
臼井さん:はい、アルファードは顔をちょっと変えてます。 たまたまヤフオクで30フェイスチェンジキットのグリルだけが出品されていたので即落札。純正バンパーに合わせて下半分をカットしました。
──すごいこだわりようですね…!
臼井さん:購入したグリルはプラスチックをグラインダーで削って整えました。上部はビスで止めてるんですけど、下部は止まらないのでタイラップでギュッと固定してます。
▲臼井さんの所有するアルファード(臼井さん写真提供)
▲臼井さんおすすめの工具、「変速電動グラインダー」
──ここからは実際に店内を拝見したいと思います!これだけ本格的な加工を自ら行っている臼井さんが選んだからこそ、お店に並んでいるアイテムも普通じゃないわけですね。ぜひ店内のこだわりも教えてください。
臼井さん:そうですね。基本的には、「なぜこれがいいのか」を説明できるものを置いています。たとえばこのグラインダー。砥石を付けて、鉄や金属を切ったり削ったりするアイテムです。私のDIYで大活躍している工具の一つで、六段階変速で回転数が調整できる優れものです。
──グラインダーの回転数が調整できると何がいいんですか?
臼井さん:金属をカットするときは回転速度が固定されたものでも良いのですが、アクリルやプラスチックなどをカットする場合は高回転だと温度が上がって、素材が摩擦で溶けちゃうんです。低回転でゆっくり削るほうが、温度が上がりづらいのできれいに仕上がる。また、砥石の代わりにバフをつけて金属を磨くこともできますが、これも回転速度が早すぎると熱でコンパウンドがこびりついたり、金属面が変色してしまったりします。回転速度が調整できるだけで、作業の幅が広がるんですよ。
──確かに、用途に合ったスペックと使いやすさが一番大事ですね。このインパクトは、あまり見かけないデザインですが……?
臼井さん:王道の「マキタ」は、バッテリーの持ちが良く、パワーもあるので、プロの職人さんが使うには最高です。でも、DIYerがそこまでのスペックを必要とするかというと、実はそうでもないことが多くて。 ほしいのは強力なバッテリーではなく、「手ごろな価格」と「安心して作業できるかどうか」だと思うんですよね。これは「アースマン」というブランドで、新潟県三条市にある株式会社高儀さんが作っているインパクトドライバーです。1866年創業の歴史ある日本メーカーなんですよ。低価格で高品質。最近ではバッテリー発火問題もありますがこれなら安心です。
▲店頭にはコンプレッサーも
──この機械はコンプレッサーですか?
臼井さん:そうです。DIYer憧れの工具ですね。家庭用の100ボルトで使えるものになります。僕は家で塗装したり、ベルトサンダーで削ったり、洗車のあと水を吹き飛ばしたり、あとはタイヤの空気入れにも使ってます。
──空気入れとしても使えるなら、ガレージに一台あると重宝しそうです。
臼井さん: そうなんですよ。タイヤって保管してると知らない間に空気が減っていたりするじゃないですか。これがあれば、いちいちガソリンスタンドに行かなくてもいい。「あると助かる系」のアイテムなんですよね。
夏タイヤとスタッドレスタイヤのを履き替え時には、これで必ず空気圧をチェックしてます。昔はその都度ガソリンスタンドにわざわざ行ってエアタンクを借りてました。これが有ればパンク修理も家でできますね。原付バイクのタイヤ交換にも活躍しました。
──工具だけでなく、ラッピングシートまで揃っているんですね。
臼井さん:このラッピングシートはプロのラッピング屋さんが使うクルマにまるまる被せちゃうようなやつですね。 昔のシートって、貼った瞬間ベタって張り付いて、一発勝負的な感じで、位置調整が難しかったり、剥がすとノリが残ったりするじゃないですか。でもこれは初期粘着が弱くて貼り直しができるんです。プロは作業効率を高めるためこのような貼りやすいシートを使っているんです。DIYをする人にはなおさら使っていただきたいですよね。小さく切れば、内装にも使えるんですよ。
▲各アイテムには背景を知ることのできるポップも置かれているのがここクラフトメイクのこだわり
──貼り直しができるなら、思い切った作業ができそうです。しかも切り売りで買えるのも良いですね。
臼井さん:そうなんです。30cmから、10cm単位で買えます。エイブリィ・デニソンっていうアメリカのトップブランドのものですね。国内で小売りしてるのは、多分珍しいと思います。
──こちらにはずらりと塗料が並んでいますが、水性の塗料なんですね。
臼井さん:はい、これはPROST'sというメーカーの水性塗料です。通常、塗装のときは有機溶剤というシンナー成分が入ったものを使用するのですが、いかんせん臭いがきつくて......。これは臭いがおさえられているので、周りに迷惑をかけることもなく、自宅のガレージで作業できるのがポイントです。しかもローラーやハケで塗れるのでお手軽にイメチェンができます。手についても水で洗い流せて安心です。
▲ホビーのPVCなどの軟質パーツ、コスプレ造形などの特殊塗料なども売られている
──でも、水性だと雨で落ちたりしないか少し心配です。
臼井さん:乾けばガッチリ固まるので、取れないですね。いきなりハードな塗装に挑戦しなくても、臭いを気にせず自宅で外観をガラッと変えられるので、DIYの幅が劇的に広がりますよ。家族みんなでペタペタ塗ったら盛り上がりますね。
▲ガレージゾーンは有孔ボードに、工具がずらり!
──いろんなアイテムがあって楽しいですね!このエリアは工具だけでなく、空間ごと提案している場所なんですね。
臼井さん:はい、ここは「ガレージゾーン」って呼んでます。ガレージのイメージができるように天井のハニカム照明や床のガレージタイル、雰囲気をつくるアメリカン雑貨もまとめて展示しています。この照明つけたらどうなるかな、このマット敷いたらどうなるかな と皆さんのご自宅を想像しながらお買い物を楽しんでいただけたらと思います。
臼井さん:ご自宅のガレージも、カラフルなタイルなどのアイテムを一点取り入れるだけで、作業が楽しくなるんですよね。
──つなぎまで置いてありますね!
臼井さん:これは山田辰さんっていう、明治44年創業の老舗メーカーのブランドです。かつてはレーシングスーツを作っていたり、飛行機を整備する会社や、サーキットのスタッフさんなんかの作業着を作っていたりするんですよ。そういう歴史や背景を聞くだけでもテンション上がるじゃないですか。こんな作業着を着ればDIYがもっと楽しくなるんじゃないですかね。
クラフトメイクの制服は山田辰のサロペットに刺繍を入れています。丈夫なのに着心地抜群です。
──ちなみに、店内を見ていて気になったんですが、商品のポップにメーカーの歴史や背景が詳しく書かれていますよね。
臼井さん:工具って、いいものはいっぱいあるのに意外と知られてない世界なんですよ。僕は「こんな工具なんだ」って理解したうえで、納得して買ってもらえる状態にしたいんです。
──ホームセンターだと価格とスペックの比較になりがちですが、背景を知ると道具への愛着が湧きそうです。
臼井さん: だから僕は、メーカーの歴史やものづくりの背景が説明できるものを選んでます。たとえば、これ。朝日金属工業さんという、造船用の工具を作っている新潟のメーカーのラチェットハンドルです。
造船の現場って、何十ミリもあるボルトを、大きな工具でガンガン締めたり叩いたりする世界。そんな過酷な現場で使われる工具を手がけた加工技術があるから、軽くしても強度が保てるんです。
──ほんとだ、軽い!工具って何となく「重いほうが丈夫なのでは?」って思ってました。
臼井さん:そうなんですよね。その常識を覆す感じが面白い。こういう工具って、「こんなのあるんだよ」って、つい誰かに話したくなるじゃないですか。僕は、そんな出会いがある店をつくりたいんです。
──「こんな工具があるんだ」という出会いを大切にするのは、やはり臼井さんご自身のDIY体験から来ているんですか?
臼井さん:そうですね。というのも、DIYって楽しいことばかりじゃなくて、基本は壁にぶつかってばかりなんですよ。失敗して「何してんだろ俺……」って途方に暮れることも多い。でも、そんな時に新しい工具や部材に出会うと、「これを使えば、あの課題をクリアできるかも!」ってパッと道が開けたりするんです。
──なるほど、道具との出会いが行き詰まった時の突破口になるんですね。
臼井さん:ええ。それに、苦労して出来上がったときの感動は、何ものにも代え難いんです。一回失敗しても、成功するまでやれば勝ちですから。
──「諦めなければ勝ち」。そこまでして臼井さんを突き動かすDIYのモチベーションって、一体どこから湧いてくるんでしょうか?
臼井さん:仲間に「何これ!」って言われたり、Instagramにテールランプをアップしたら、海外の人から「どこで売ってるの?」ってメッセージが来たり。そういう反応があると嬉しいんですよ。ああ、またやろうかなって思います。最近は、壊れて直して、また壊れて直して、みたいなことが多いですが(笑)。
▲店内入口にはアメリカン雑貨も売られている
──その気持ちが、お店づくりにもつながっているんですね。
臼井さん:そうですね。ラッピングや水性塗料で外観を変えたり、ガレージ空間を楽しむためのアメリカン雑貨を置いていたりと、ここでしか見られないアイテムも多いと思います。実際、雑貨目当てで来てくださる方もいますね。工具に興味がある人、DIYに興味がある人には、ぜひ一度来てほしいです。「何かやりたいけど、何をやりたいか分からない」っていう人でも、店に来て「こんなことできるんだ」って発見してもらえたら嬉しいですね。
──ありがとうございました!
クラフトメイク湘南平塚店は、単に必要な道具を買いに行くための場所ではありません。
プロ顔負けの加工をやってのける“沼の住人”が厳選した、語れる背景を持つ工具たち。そして、作業空間そのものを彩るガレージアイテムの数々。
既存のカー用品店やホームセンターでは味わえない、DIYerの探求心を刺激する「セレクトショップ」なのです。
カスタムの沼は深く、そして果てしなく楽しい。
「今の仕様に少し飽きてきた」「次の一手が見つからない」。
そんな思いを抱えながらこの“大人の秘密基地”を訪れれば、きっと新しいインスピレーションとの出会いが待っているはずです。
CRAFT MAKE 公式サイト-DIYer必見-工具・DIY・楽しいガレージライフをテーマとしたセレクトショップ