とことん極める
多くのクルマ好き、バイク乗りが憧れる、ガレージのあるカーライフ。特に賃貸のガレージハウスは人気が高く、「いずれ入居したい」と考えている人も多いのでは?
青空駐車場を利用する筆者も、その中の1人。けれど、「普通のクルマのオーナーに貸してくれるのか?」などなど正直、わからないことだらけ……。
そこで、ガレージハウス事業を担当するオートバックス・プロパティデベロップメンツ株式会社の辰巳正幸(辰巳・正幸)さんにお話を聞きました。
▲辰巳さんは「車庫、ついていってもイイですか?」でも、取材に協力してくれた(写真:木谷宗義/type-e)
店舗や商品バイヤーなどを経験し、2021年にガレージハウス事業へと異動した辰巳さん。
同年、勉強のために他社の賃貸ガレージハウスに入居。ガレージハウスでつながった縁がきっかけで、大型バイクやヴィンテージカー(メルセデスベンツ「280SE 3.5」)を所有するに至ります。
そして昨年、企画から関わったガレージハウス「BACSPOT(バックスポット)相模原」がオープン。すぐに全室が埋まり、辰巳さんの打ち出したコンセプトが正しかったことを証明しました。
▲現在、辰巳さんのガレージには、メインにランクル70と2台のバイクが保管されている(写真:飯島隆)
――「車庫、ついていってもイイですか?」では、ありがとうございました。いきなりですが、そもそもガレージハウスとは、どのような建物のことなのでしょう?
辰巳:(建築基準法による)明確な定義はありませんが、一般的には住居を目的とした建物内に駐車スペースを設けた、家屋や集合家屋を指します。
敷地内に家屋とガレージ、それぞれが独立して建っている物件は、通路でつながっていてもガレージハウスとは呼ばれません。また、建物内にガレージがあっても、単にクルマやバイクが停められるだけのものはガレージハウスと呼ばず、ビルトインガレージと言います。
――では、辰巳さんの理想とするガレージハウスとは、どのようなものでしょうか?
辰巳:ずばり『クルマ/バイクのある暮らし』を想定して設計された建物ですね。
具体的には、まずシャッターや扉といった、外界と駐車スペースを隔てる設備があること。そしてオーナー様がガレージ内で“クルマやバイクのある生活を愉しむことができる”よう、考えて設計されていることですね。ガレージハウスの主役であるクルマ/バイクにとっては、リビングルームとなる設計です。
外界と隔てられる駐車スペースは、車両の保護と防犯のため。雨風や日差しから愛車を守り、またイタズラや盗難、勝手な車両の撮影といった被害を未然に防ぎます。安心して愛車を保管できるよう、しっかりとしたセキュリティを設けるのは最低限の条件ですね。
▲クルマだけでなくバイクを楽しむ人も多い。バイクはなおのことセキュリティが大切
――BACSPOT相模原の入居要項には「クルマやバイクが好きで、ガレージハウスでの生活を愉しみたい方限定」とありますね。
辰巳:中には、車両の保管だけを目的にする人もいますが、やはりガレージハウスならではの愛車生活を愉しんでいただきたい。
そこでBACSPOT相模原は、入居に「クルマやバイクが好きで、ガレージハウスでの生活を愉しみたい方限定」という条件を加えさせていただきました。当社が所有する『BACSPOT朝霞(埼玉県朝霞市)』や『INCELL足立花畑(東京都足立区)』も同様です」
――それでは辰巳さんが最初から企画、設計に関わったガレージハウス、BACSPOT相模原の特徴を教えてください。
辰巳:一番の特徴は、ガレージ内の環境にあります。賃貸ガレージハウスの多くは、『1階に車庫があればいい』といった形で、ガレージ部(の面積)が狭く、クルマをとめると、それだけでいっぱいになってしまいます。
しかし、オーナー様がガレージハウスで一番やりたいことは、やはりガレージ内で愛車を眺めながら、くつろいだり愛車をいじったりすることではないでしょうか。
――いいですね。友人を呼び、愛車を眺めながらの談笑とか憧れます。
辰巳:ですよね。正直に言わせてもらうと、これまでの賃貸ガレージハウスは『ガレージで愉しむ』というスペースや発想が少ないと感じていました。そこでBACSPOT相模原は、すべてのルームに十分なガレージスペースを確保し、入居者様の憩いの空間となるホビールームを設けました。
ガレージスペースは動きやすく、主役の愛車たちをゆったり停め、そのそばで過ごしていただきたいという想いからです。間取り図にクルマの保管台数を多く見せるようなことはしていません。実際には2台停められても、『クルマ1台+バイク1~2台』といった表記にしています。
辰巳:ホビールームはカウンターテーブルとスツールを置ける広さがあり、くわえて格納式のガラスパーティションで駐車スペースと仕切ることができます。
▲ガレージやホビールームのレイアウトは部屋によって異なる。画像はA棟の1~3号室のガレージ風景、左奥がホビールームだ
▲画像はB棟6号室のホビールーム。カウンターテーブル等はイメージをつかみやすいよう、参考用に配置されたもの
辰巳:ガレージハウスのガレージは天井が高く、土間はコンクリートやタイル仕上げ。またシャッターも大きいといった構造から、冬期は冷え込みます。多くのガレージハウスではエアコンを設けていますが、経験上、それでは不十分です。底冷えで寒く、指先がかじかむ中では、とてもくつろげませんよね。
なのでBACSPOT相模原では、ファンヒーター用のガス栓も設置。地元のガス会社の協力で、機材も無料で貸出しています。また雰囲気にこだわりたいオーナー様のため、ペレットストーブの設置にも対応。メーカーのご紹介が可能です。
▲反射熱で人の体とガレージ全体を温めるペレットストーブの設置対応をダッチウエストジャパン株式会社の協力により実現(画像は吸排気筒の設置工事前)
辰巳:洗車も愛車との愉しみのひとつですよね。そこで、BACSPOT相模原ではガレージ前に洗車用のスペースと排水溝への傾斜を設けました。ガレージ内のシンクは分岐水栓を設けているので、洗車の度にホースを付け替える必要もありません。
▲しっかりとした排水設備により、雨上がりの水たまりで愛車が汚れることもない
▲純水生成機も全室に備える。2年毎に交換用カートリッジを提供
――BACSPOT相模原はペット可と聞いています。散歩から帰ってきた飼い犬の、足を洗う時にも便利ですね!
辰巳:その通りです。ちなみに飼育できるワンちゃんは1匹まで、猫ちゃんは2匹までとさせていただいています。
あと、シャッターは電動のハイスピード/静音タイプを採用し、ストレスなく開け閉めすることができるようにしました。スマホのアプリでの操作も可能で、開閉状況を確認することもできるので、“ガレージハウスあるある”の「出かけてからシャッターを閉めたか」を確認しに戻ることもなくなります。
また、車載リモコンを愛車のUSBポートに差しておけば、エンジンのオン/オフとシャッターからの距離に連動してシャッターを開け閉めできます。ガレージが主を見送ってくれ、また帰りを待っていてくれているような感じです。
▲大きさに関係なく、全室でハイスピード/静音タイプのシャッターを採用。車載リモコンを活用すれば、愛車のキーON/OFF、出発/帰宅に連動して開閉ができる
▲シャッターを操作するスマホアプリとUSBポートに接続する車載リモコン
――至れり尽くせりですね。間取りは、2階は住居、3階がロフトとのことですが、こちらに特徴はありますか?
辰巳:BACSPOT相模原の竣工イベント時に、モデルルームにヴィンテージオーディオを設置し、大人の休日の過ごし方を表現しました。これが思いのほか、反響が大きかったんです。
▲ヴィンテージオーディオのサブスクサービスをCrafted Audio Services byTS-Proの協力により計画中
辰巳:このときは、ヴィンテージオーディオの修理・メンテナンスや販売を手がけるCrafted Audio Servicesさんに『大人の休日を表現したい』と相談したところ、快く協力いただき展示しました。しかし、展示だけで終わらせるのはもったいないし、入居者様にもこの至福の時間を愉しんでいただきたいとの想いでサブスクサービスの計画を進めています。
ご利用いただける機種は、その時々で異なりますが、ご希望があれば、昔使っていた機種、憧れていた機種などを探して、メンテナンスした上で設置可能です。雨の日などドライブに不向きな日は音楽を聴きながら、ゆっくりと過ごしていただきたいですね。
――他にも、入居者には特別な特典があると聞いています
辰巳:はい! 国内自動車レースの最高峰、『SUPER GT』の観戦シートや、大規模オートアフターマーケットへの特別ご招待のほか、不定期ですが、プロカメラマンによる愛車、あるいは愛車とオーナー様の撮影会も実施します。
写真は現像後、アートフレームにして進呈します。その他、さまざまなコミュニティイベントの開催を予定しており、こちらへも優先的にご参加いただけます。
――ここからは疑問に答えていただく形を取ります。まずはBACSPOT相模原に施されている防犯設備を教えてください。
辰巳:先にも触れましたが、オーナー様が安心して愛車を保管できるよう、しっかりとしたセキュリティを設けるのは最低限のこと。BACSPOT相模原では、玄関の鍵に電子錠(スマートキー)を採用。敷地内に防犯カメラを設け、全部屋にホームセキュリティを導入しています。
▲電子錠はスマホ式とカードキー&暗証番号式があり、部屋によってモデルが異なる
辰巳:また、ガレージ内には遠隔操作カメラを設置しており、入居者様はスマートフォンからいつでも愛車の確認が可能です。
余談ですが、私の住まいのガレージにも遠隔操作カメラを設置しており、ヒマさえあれば愛車を眺め、ニヤけています。いいですよ、ガレージ内の愛車の姿は!
▲ガレージ内の様子が気になったときは常時、カメラから送られてくる映像をスマートフォンやPCで確認できる
また、入居者様以外の立ち入りを減らしたり、愛車が人目にさらされたりしないための工夫もしています。
たとえば、ポストは玄関周りではなく、敷地入口付近に集合ポストを設置。さらに、各部屋専用の宅配BOXも用意しました。
▲ガレージハウスだからこそのプライバシー配慮にもこだわっている
郵便物を取りに行っていただくご負担にはなりますが、外部の方の敷地内立ち入り抑止やガレージ内の愛車が外部の目にさらされないように、あえてこのような仕様にさせていただきました。
――これなら女性の方も、安心して独り暮らしができそうですね。先ほど「クルマやバイクが好き」であることが入居の条件とおっしゃっていました。車種にもヴィンテージカーやスーパーカーといった条件があるのでしょうか?
辰巳:どのような車種でも問題ありません。実際に当社の所有物件には、コンパクトカーのオーナー様も住まわれています。
話をうかがうと『本当は趣味の車に乗り換える予定だったが、そのクルマに愛着が湧いて手放せなくなった』とのことで、むしろこういったオーナー様にこそ住んでいただきたいと思っています。
――その言葉を聞けて安心しました。次に多くの方が気になっていると思う賃料についてです。やはり高額なのでしょうか?
辰巳:正直にいえば、同じ間取りの物件と比べると割高です。ですが、ガレージ付きで、設備やセキュリティが充実。ペットも条件付きですが飼育できる物件です。割高どころか目一杯、頑張っている賃料だと思っています。
BACSPOT相模原の竣工情報がリリースしたときは、「こんな高い賃貸に誰が住むんだよ」と、いった声もネット上では聞かれました。でも、すぐに満室になりました。
――それでは最後になりますが、今後のBACSPOTのオープンや活動予定などを、公開が可能な範囲で教えてください!
辰巳:2026年8月末予定で、福岡県に『グランレジデンス大橋 concept by BACSPOT』が竣工予定です。ここはメゾネットタイプの部屋1室が、ガレージハウスとなります。
それ以外の14部屋は、大型バイク対応のエレベーターで居室内にバイク、自転車、趣味のギアなどを展示/保管可能です。
▲BACSPOTがコンセプト設計に関わった賃貸マンションイメージ(福岡県福岡市 ※入居募集開始は7月頃を予定)
このように、ガレージハウスの設計に強いこだわりを持つ辰巳さん。でも、辰巳さんのこだわりはこれだけにとどまりません。『古き良き時代のバイクやクルマを次世代につなぐ』ための活動も支援していくというのです。
辰巳:その始めの一歩として、ダカールラリー等でご活躍されたレジェンド、根本純さんが主催する、Historic Car(ヒストリックカー)イベント『THE銀座RUN Ethical∞Meeting2026』をスポンサード。ゼッケンやリーフレットには施設協力の「A PIT AUTOBACS SHINONOME」と運営協力のBACSPOTのロゴが入りました。
▲5月に行われた『THE銀座RUN Ethical∞Meeting2026秋』のゼッケン
▲2026年5月に行われた『THE銀座RUN Ethical∞Meeting2026春』の模様。往年の名車達が都内を走行した
また、2026年11月1日開催の『THE銀座RUN Ethical∞Meeting2026秋』はA PIT AUTOBACS東雲がスタート会場となることに決まっています。旧車オーナーの悩みでもある内装劣化を抑えるBACSPOT監修商品の販売も決定しました。
第1弾は、内装を紫外線や熱から守る放射冷却素材「SPACECOOL(スペースクール)」を活用したハーフカバーとフロントガラスカバーで、アラデン株式会社から発売予定です。SPACECOOLは世界最高レベルの反射率、放射冷却性能を持った素材で、ARTAでも日傘やボディカバーに採用しています。
▲希少車、絶版車でもアラデン株式会社が型取り体制を準備中
クルマやバイク好きに人気のガレージハウス。オートバックスが運営するBACSPOTは、よりクルマやバイク好きに向けた設備を設け、その仕様とコンセプトは高く評価されているそう。
普通のクルマに乗る私でも問題なく受け入れてくれるとのことで、空き部屋とタイミングがあったら、安心して申し込むことができそうです。
ガレージハウスという不動産提供にとどまらず、旧車や歴史的価値のある車両を大事にする自動車文化を、次世代に継承していく活動にも貢献していきたいというBACSPOT。これから多くのイベントサポートを予定しているそうで、レポートを楽しみに待ちたいと思います!
取材/文:糸井賢一
編集:木谷宗義/type-e+ヒャクマンボルト
写真:BACSPOT